進む海外へのシフト。「作業に責任持たなければ…」
多くの企業が仕事始めを迎えた五日、天草池田電機=天草郡松島町=でも、電子制御部品(リレー)生産ラインが再びフル稼働に入った。
コンベヤの上を部品が流れ、手際良い作業が続く。時折、ラインの女性社員たちにアドバイスをする女性がいる。「リーダー」の一人、寺中賀津子さん(43)=同郡姫戸町=だった。「ここはまだ、手作業が残っている職場。品質向上には一人ひとりが敏感になること」
同社では、QC(品質管理)サークル活動などが展開され、各職場の課題を話し合う。「不良率ゼロに」「作業のポカミス低減」―。グループはそれぞれの目標を掲げ、就業時間御にミーティングを重ねている。「少しずつ変化はある。でも、まだ参加しているだけの人もいる。品質改善は、まず意識改革から」と寺中さんは手厳しい。
三年前。中国・深圳でオムロンの生産工場を立ち上げるため、一カ月間、技術指導に派遣された経験がある。一年後、その深圳から視察にやってきた現地社員から言われた言葉にショックを受けた。「うちの工場ではこんなことしないよ」
社員が製品の上で、作業していた。異物の混入を避けるため、絶対にやらないよう徹底していた「基本中の基本」を部下が守っていなかった。そのことを、わずか一年前に技術指導した現地社員から指摘された。
コスト競争が激しくなり、ただでさえリレー生産は海外へのシフトが進む。複雑な工程の簡略化、海外の技術力アップなどが、その流れを加速する。「大事なのは基本の徹底。もっと一人ひとりが作業に責任を持たなければ、仕事はどんどん海外に移ってしまう」。親会社がなくなり、より厳しさが問われていると実感している。
二十歳で結婚、三女を育てながら働く。生産実績、クレーム件数など数字に追われる職場だ。受注増で増産体制となり、休日も減った。それでも「職場にいると、不思議と落ち着く。生きがいなのでしょうか」。生産ラインを見守りながら、充実感をかみしめる。
「熊本日日新聞」