新聞掲載記事

2004年1月20日 「働く。」第一部 サバイバル工場(17)

家族を守るために転職。「天草を第二の古里にしたい」

天草池田電機=天草郡松島町=の工場で、二十四時間稼働する電子制御部品(リレー)の主力G4A生産ライン。一人のオペレーターが厳しい表情で製品検査を続けている。岩永明さん(34)=同郡有明町=だ。
 鹿本郡植木町出身。昨年九月、熊本市近郊のメーカーから転職してきた。出産のため有明町の実家に帰省していた妻が(24)が「親と同居したい」と希望したためだった。この会社が四社目の職場となる。
 不況の時代に転職することに不安もあった。「天草で働く場所が見つかるだろうか」。再就職のために、以前の職場で働きながらホームヘルパーの資格も取った。同じ製造業の職場に就けたのは幸運だったという。
 「家族を守る」。昨年夏に長男が生まれてその気持ちが強くなった。子どもを抱いている時に父親の責任を実感する。「この子が大きくなったら、好きなサーフィンを一緒にやれるかな」。天草の海を眺めながら、そう思うことがある。
 熊本市内の高校を卒業した後、神奈川県内の工場で働いた。十一年前、独り暮らしになった母親が心配でUターンした。天草に転居した今、母親は兄と同居している。
 「一緒に暮らして、互いに支え合うのが家族。その家族の生活の基盤をつくるのが仕事だと思う。だから、転職を決めた。この天草を、自分の第二の古里にしたい」
 今まで歩いてきた製造業の生産現場で、コストダウン競争の厳しさは肌身にしみている。「徹底して品質にこだわれば、国内製造業も生き残れると思う。品質勝負なら、市場も必ず振り返る。そのためにはまず、自分自身の腕を上げること」
 新たな職場の仕事を懸命に覚えながら「生き残るために、この会社ができる仕事は何だろう」と考える。ホームヘルパーの研修時代に思い付いたアイディアが、ひょっとしたら会社の独自製品につながるかもしれない―。今度「ヒラメキ宝箱」に投かんしてみようと考えている。

「熊本日日新聞」

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