新聞掲載記事

2004年1月5日  「働く。」第一部 サバイバル工場 (4)

効率が生命線。女性たちの熟練技術が支える

午前八時前。天草池田電機=天草郡松島町=の駐車場に、何台もの車が駆け込んでくる。始業時間より三十分以上も速い。工場内では、出勤してきた従業員が生産設備の立ち上げを始めている。
 「強制されているわけじゃないけど、始業前にやるべきことがたくさんあるんですよ」。小幡香代子さん(40)=松島町=が、厳しい表情で設備を点検している。シリンダーがうまく作動しない。職場ミーティングが始まる前に、復旧させなければならない。
 生産ラインの先頭の席では、一心に電子制御部品(リレー)の組み立て作業を始めた女性もいる。部品の投入から組み立て、検査まで、製品の完成には約十五分がかかる。「始業開始で一斉に席に座っても、後ろの仕事には待ち時間が生まれる」。小幡さんたちの仕事は効率が生命線だ。
 天草池田電機は、女性が従業員の六割以上を占める。生産現場の中枢を、女性たちの熟練の組み立て技術が支える。小幡さんは入社二十年目。主力製品の生産ラインの「リーダー」を任されている。生産状況を管理しながら、病欠者や休憩に入った人の代役も果たす。品質改善の会議では、上司に現場の意見をぶつけることもある。
 「オムロン天草」の閉鎖後、新会社が設立されて一年半。「仕事はこれまでの延長だけど、オムロンの名前が消えた危機感はある。不良品を多く出したら会社が市場から見放され、私たちも仕事を無くしてしまう。一人ひとりの仕事の質が問われている」
 オムロン時代、機械が故障した時には男性社員を呼んでいたが、今は自ら六角レンチを握ることもある。責任は重くなったが、充実感も感じているという。
 工場の壁には、製品ごとの生産目標と実績が刻々と表示される。「マイナスになってる。もっと頑張ろうよ」「きょうは(実績が)上がっているよ、そのまま行こう」。ラインの稼働音がうなる工場に、小幡さんの声が響く。

「熊本日日新聞」

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