新聞掲載記事

2004年1月3日 「働く。」第一部 サバイバル工場(2)

眠らない生産ライン。設備も人も「24時間体制」

天草池田電機=天草郡松島町=の向上は夜も眠らない。電子制御部品(リレー)の生産設備は二十四時間体制。全自動で稼働する主力製品「G4A」の生産ラインに対して、夜勤の男子オペレーターは材料補給や次々に出来上がる製品のチェックに忙しく立ち回る。
年末の夜。設備の異変を知らせるパトライトが赤く店頭した。ライン管理の責任を負う「担当者」の岩本勇さん(31)=天草郡姫戸町=が急きょ駆け付け、機械をのぞきこむ。製品がスムーズに流れていない。顕微鏡のような「ツールスコープ」を使った調整は数十分間続いた。
「理想は、機械が故障なく稼働して、不良品をつくらないこと」。現実には、わずかなズレで異常が発生する。原因を突き止め、対策を練る。岩本さんの仕事はその繰り返しだ。
「担当者」には、生産が納期に間に合うよう、仕事の段取りを考える役割もある。「品質を維持しながら、今はぎりぎり生産目標数を達成している状況。生産設備の効率をもっと上げたい」
十三年前、熊本工高電気科を卒業した。漁師だった両親は、長男に対して「サラリーマンになること」を望んだ。天候や自然の状態に左右されるような仕事ではなく、安定した生活を送ってほしいとの思いからだった。「地元で電気系の大きいところ」。選択の道は、今の会社の前身「オムロン天草」しかなかった。
「前の会社の時は年功序列があった。少し変ってきた」。大企業の子会社だったころより、職場で自分の意見が採用されることが多くなった。頑張れば頑張っただけ、評価してもらえるという手ごたえがあるという。
昨年末。GA4生産ラインは大みそかの朝まで稼働した。電子部品の生産が海外にシフトしていく中、GA4はいつまで会社の主力製品となってくれるのか。一抹の不安がよぎる。「品質と生産性、両方の結果が今、求められている」。新年、岩本さんは思いを新たにした。

「熊本日日新聞」

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