新聞掲載記事

2004年1月21日 「働く。」第一部 サバイバル工場(18)

「天草に残りたい」。充実感見えてきた新卒社員

「夜勤と日勤の交代勤務は、まだ少しきつい。でも早く慣れないと」。昨年四月、天草池田電機=天草郡松島町=に入社した小﨑祐一さん(18)。同社の前身、「オムロン天草」から通算すると、九年ぶりの新卒社員になる。同期は九人だった。
 電子制御部品(リレー)に組み込むコイルの、生産ラインのオペレーターを務める。最大五台のラインを受け持ち、製品検査と記録、材料補給などに追われる。「毎日がバタバタの繰り返し。生産する機種の切り替えに手間取ったら、一気に仕事がたまってしまう」
 不良品を作らないことが一番の目標だ。不良品を発見した場合は、機械の調査に走る。前日の生産数を上回ると、ひそかな充実感を覚える。それは「機械が止まらず、不良品がなく、自分もよく動けた証拠」だからだ。
 失敗もあった。昨秋、顕微鏡検査で不良品を見逃してしまった。「仕事に慣れてきたころ。なんとなく確認したつもりになっていた」。社内の抜き取り検査で出荷に至らなかったが、仕事の厳しさを実感した。
 自分では気づかない機械のトラブルが、職場の先輩には簡単にわかる。「早く先輩たちに追い付くため、自分なりに努力していきたい」。
 同期には既に退社した人もいる。「高校生と社会人のギャップのある。大人の世界は厳しいから。気持ちは分かるけど、甘えもあると思う」
 本渡市の出身。天草工業高を卒業した。長男でもあり、天草に残りたかった。「せかせかして息が詰まりそうな都会よりも、人も優しか天草が自分に向いている」
 高校の友人は、ほとんど島外に出ている。旧友と再会した正月。「もう帰りたか」と、県外に就職した友人が打ち明けた。地元の仕事はなかなか見つからない。小﨑さんは「がんばれよ」と言うしかなかった。
 最近、好きなレゲエミュージシャンをまねて丸刈りにした。社会人二年目に向けて心機一転という気持ちもある。「まだ若いし、将来のことはよく分からない。一日一日がんばるだけ」

「熊本日日新聞」

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